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胆嚢疾患・胆嚢摘出術

胆嚢疾患・胆嚢摘出術

胆嚢疾患について

胆嚢とは、肝臓で作られる胆汁(消化液)を一時的に蓄える袋状の器官です。

食物を食べると胆嚢が収縮し、これにより胆嚢内に溜まった胆汁が総胆管という管を通って十二指腸に吐き出されます。

分泌された胆汁は、膵臓の消化液などと一緒になり、食べ物中の脂肪分を消化吸収されやすいよう乳化する役割を担っています。

ところが、何らかの異常で胆嚢内に胆汁成分が変質して結晶化したもの(胆石症)や、胆汁成分が変質して泥状になったものがたまる(胆泥症)ことがあります。

またこれらの異常が進行していくと、胆嚢粘液嚢腫になってしまうといわれています。

症状

胆嚢疾患により胆汁を十二指腸に排泄できなくなると胆汁うっ滞が生じます。元気食欲がなくなり、嘔吐が起きます。

また、ウンチが白色になったり、黄疸(体が黄色になる)が見られます。

胆嚢が腹腔内で破裂すると、突然ショック状態に陥り、最悪の場合突然死することがあります。

胆嚢が破裂した様子を腹腔内にカメラを入れて観察した像です。胆嚢から漏れ出た胆汁が腹腔内に確認できます。

胆嚢疾患について

治療

症状が現れた場合は、胆嚢を摘出する緊急手術を実施する必要があるため、すぐに動物病院に行くことをお勧めします。

ただ、症状が発現してからの手術はリスクが高いため、早期診断・早期治療が望ましいです。

定期的な血液検査(最低年に1回)を実施し、肝酵素等が上昇していれば胆嚢のエコー検査をします。

胆嚢粘液膿腫の場合、エコー検査では放射状に胆泥が胆嚢壁に付着したキウイフルーツ状の所見が見られます。

胆嚢疾患について

早期に胆嚢疾患が見つかれば、内服にて病気の進行を遅くしていきます。

宮崎大学農学部附属動物病院に所属されている鳥巣至道先生に肝臓専門医のアドバイザーとして定期的に来院して頂いています。

肝臓専門診療では胆嚢粘液嚢腫の治療も行なっています。

以下に、当院で実施した手術症例の一部をご紹介いたします。

MIX 6歳 去勢 雄における胆嚢摘出術

症例は6歳齢、3 kgのトイプードルです。エコー検査では胆嚢の中を満たすほど胆泥が溜まっています。このままにしておくと胆嚢がいつ破裂するか分かりません。

MIX 6歳 去勢 雄における胆嚢摘出術

この症例は糖尿病や膵炎を併発していたため、体に負担のかかる大きな手術にはオーナー様も積極的にはなれませんでした。しかし、負担の小さな腹腔鏡での手術であればと手術に臨みました。

MIX 6歳 去勢 雄における胆嚢摘出術

お腹にトロッカーを4本挿入し、そこから鉗子とカメラを入れて胆嚢を肝臓から剥がしていきます。カメラで拡大しながら見ることができるので開腹手術よりも視野が確保できます。

摘出した胆嚢にはゼリー状の胆泥がへばりついていました。傷口は1cm程度の傷が4つと5mm程度の傷が1つになりました。

MIX 6歳 去勢 雄における胆嚢摘出術

腹腔鏡を用いた手術では傷口が小さく、動物にかかる負担は軽くなります。また、術後も回復が早く退院の時期が早いため、入院によるストレスも最小限に抑えられます。このワンちゃんは術後の状態もよく、手術後4日目に無事退院しました。

胆嚢の状態にもよりますが、合併症のある子やストレスを感じやすい子は腹腔鏡による手術で負担を軽くしてあげることが出来るかもしれません。

MIX 6歳 去勢 雄における胆嚢摘出術

腹腔鏡下胆嚢摘出術

CASE1

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

エコーで胆嚢炎と胆のう粘液嚢腫であることを確認し、破裂の危険性を考えて腹腔鏡下胆嚢摘出術を実施することになりました。

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

臨床症状もなかったので腹腔鏡下胆嚢摘出術

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢の周囲の脂肪や膵臓、十二指腸が激しく癒着し剥離が困難な状態でした。胆嚢は全く確認することができませんでした。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

少しずつ癒着を剥がして胆嚢が確認できるようになってきました。
こんなに癒着していることはあまりないので過去に膵炎や胆嚢炎を起こし苦しい時期があったことが推測されました。
それにしてもなかなか胆嚢はでてきませんでした。

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

摘出した胆嚢はカチカチで中にはゼリー状の硬い物質が詰まっていました。
手術は丁寧に剥離していったため時間がかかってしまいました。
症状がなかったので、こんなに大変な状態になっているとは。

CASE2

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

他院より紹介。胆嚢炎がひどく繰り返す嘔吐がありました。
腹膜と一部横隔膜に胆嚢ががっちりと癒着していました。
体重が2kgと体も小さかったのですが、飼い主さんの希望もあり、腹腔鏡下で手術を実施することになりました。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

丁寧に丁寧に出血をコントロールしながら少しずつ手術をすすめていきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

癒着(矢印)がひどく胆嚢を確認することができませんでした。 このように癒着しているときはギリギリで剥がすとひどく出血をおこすことがあるので無理にはがそうとしないで、脂肪の血管に注意しながら脂肪ごと剥がしていきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢の通路がちゃんと開通しているのか調べるために造影検査をしています。
この処置をすることで洗浄の効果と詰まりを確認することができます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

体の外に出すためお腹の中で袋に入れていきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

このときに胆嚢と一緒にクリップやガーゼも回収します。そしてお腹の中をきれいにしていきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

最後にお腹の中をきれいに洗浄していきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢は分厚くなり周りには脂肪が張り付いていました。手術をして元気になりました。

CASE3

体重1.1kgでの腹腔内の観察および腹腔鏡下胆嚢摘出術。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢の頸部に糸を通し動脈を確保しています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

総胆洗浄をして詰まりがないかまずは確認します。(上)
きれいに開通していました。鉗子が大きく感じますが体が小さいので大きく見えます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

 

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢を少しずつ丁寧に肝臓から剥がしています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

回収袋にいれて体外に摘出していきます。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

お腹の中を洗浄して終了となります。

CASE4

経過が長かったので周りの臓器に癒着していたワンちゃんです。胆嚢粘液嚢腫

腹腔鏡下胆嚢摘出術

胆嚢(矢印)の取り囲むように肝臓や腸が癒着していました。肝臓の表面はボコボコしています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

詰まりがないかを透視で確認しています。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

 

腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術

回収袋にいれて終わりになります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

チューブを設置して終了です。

開腹下胆嚢摘出術(胆嚢粘液嚢腫)

手術中の所見です。胆嚢が破裂しており、中から粘液状の胆泥が出てきています。

開腹下胆嚢摘出術(胆嚢粘液嚢腫)

下の図は取り出した粘液状の胆泥です。胆嚢粘液嚢腫の手術は、胆嚢摘出を行い総胆管の疎通性(胆汁の排泄)を確認します。

開腹下胆嚢摘出術(胆嚢粘液嚢腫)

猫 避妊メス 14歳における胆石摘出手術

手術中の所見です。

猫 避妊メス 14歳における胆石摘出手術

胆嚢を引っぱり、切開し胆嚢内の胆石を摘出します。その際、胆嚢を一緒に摘出します。胆嚢粘液膿腫の手術と同様に総胆管の疎通性(胆汁の排泄)を確認します。

こちらが摘出した胆嚢と胆石です。

猫 避妊メス 14歳における胆石摘出手術

胆嚢洗浄

胆泥症や胆石症の原因はハッキリとは解明されておらず、内服薬で完治させるのは非常に難しいです。だからといって予防的に胆嚢を取ってしまうのもどうなのでしょう・・・。

そこで考えられたのが「胆嚢洗浄」です。

胆嚢洗浄はその言葉の通り、胆嚢に泥や石が貯まってきたら、それが詰まってしまう前に胆嚢の中身を洗って一度きれいにするという処置です。この処置は腹腔鏡を用いて行うため比較的ワンちゃんの負担が少ないのが特徴です。

それでは実際の写真をお見せします。まずは超音波の写真です。

胆嚢洗浄

このワンちゃんの胆嚢の中には、白く映る石のような物がたくさん見えます。この状況ではいつ総胆管が詰まってもおかしくありません。そこで胆嚢洗浄を行いました。

胆嚢洗浄

まずはお腹にカメラと鉗子を挿入するためのトロッカーを2本入れます。

お腹の中に入れた鉗子で胆嚢を持ち上げ、胆嚢をお腹に固定します。

胆嚢洗浄

その後胆嚢に小さな穴を開け、そこからチューブを入れて胆嚢を洗います。

胆嚢洗浄   

胆嚢の中から出てきた胆石です。

胆嚢洗浄

かなりの数が入っていましたが、きれいに取ることが出来ました。

胆嚢洗浄

また、腹腔鏡を用いるため傷口も1cm程度の物が3つという非常に小さいものになります。このワンちゃんのその後は・・・。

胆嚢洗浄

術前

胆嚢洗浄

術後1ヶ月後

胆嚢洗浄

術後1ヶ月経過しても胆嚢の中はキレイなままです!胆嚢洗浄は決して根本的な治療ではないため再発の可能性は残ります。しかし今の時点では総胆管が詰まってしまうことはありません。

このように胆嚢洗浄により、飼い主さんの不安を取り除くとともにワンちゃんの生活の質を向上させることができます。

何かお困りごとがありましたら、是非ご相談ください。

何かお困りごとがありましたら、是非ご相談ください。

飼い主様はもちろん、獣医師の方もお気軽にお問い合わせください。

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